ペットを飼ったことがある方なら、一度は動物病院に行ったことがあると思います。
ほとんどの動物病院には獣医師の他、動物看護師さんも一緒に働いています。
私も動物病院で5年間働いていましたが、嬉しいことに飼い主さんの娘さんが「動物看護師になりたいと言っている」というお話も度々聞いたことがあります。
今はトリマーのみならず、動物看護師になるための専門学校もありますが、この動物看護師になるためにはどのような資格が必要なのでしょうか?
これから大きく変わろうとしている動物看護師の制度についてもお話していますので、どうぞ最後までご覧ください。
動物看護師になるために必要な資格とは?
人間の看護師になるには、高校卒業後専門学校か短期大学で3年間看護について学び、国家資格を取得する必要があります。
しかし2019年7月現在、動物看護師になるために必ず必要となる資格はありません。
各専門学校などが発行している資格はあくまで民間資格なので、法的な効力は何もありません。
したがって、何の資格も持たない素人がいきなり「今日から動物看護師やります!」と言ったところで全く問題ないのです。
実際に動物病院の求人を見てみると【未経験可】という文字が一緒に掲載されていることもあります。
以前、このような求人を見て「私もやってみたいけど大丈夫だろうか?」という相談を小さな子持ちのママから受けたことがあります。
その人は犬が好きでずっと犬を飼っていたので全くの素人というわけではありませんでしたが、動物病院勤務経験があった私は「動物が好きだからという理由だけなら、やめた方がいい」と答えました。
もちろん、動物好きだからこそ愛情持って患者さんを看てあげることができるので、これは必須条件でもあるのですが、いざ働いてみないとわからない「危険」な場面もかなり多いのです。
この場合の「危険」とは、動物でなく私たち看る側のことです。
動物病院には、様々なペットが毎日来院します。
中には病院嫌いでめったに来ないのでずっと震えている子や、逆に攻撃的になる子もいます。
皆が皆、大人しく診察を受けてくれるとは限りません。
パニックになって部屋中を糞尿垂らしながら走り回って薬棚を引っ掻き回す猫ちゃんや、飼い主さんも制止できないくらい大暴れする大型犬もいます。
そんなペットたちを落ち着かせ、あるいは力ずくでも診察できる状態に持っていくことも、動物看護師の役割です。
私はトリマー専門学校出身でしたので、動物看護師については授業で週一勉強したくらいですし、実技の授業はありませんでした。
もちろん、動物看護師の資格なんて持っていません。
そのため、動物病院でトリマー兼動物看護師として働くようになったら、トリミングの保定ではなく、診察に必要な保定の仕方から現地で学ぶことになりました。
犬の扱いには慣れていたのでそこまで苦労しませんでしたが、問題は猫ちゃん。
私は猫を飼ったこともなければ、トリミングでも猫を扱うことはなかったので、実はほとんど触ったことがなかったのです。
猫は犬と違って体が柔らかく、すばしっこいので保定が難しいです。
また、犬はある程度暴れても大丈夫なくらいはがっちり保定できますが、猫が本気で暴れると100%誰かが怪我をします。
猫ちゃんの保定は「いかにして落ち着かせられるか」が肝なのですが、その見極めは経験が頼りです。
私も一週間ほどできつ~い洗礼を受けました(笑)。
猫の噛み傷やひっかき傷は特に化膿しやすいので傷口を広げるようにぐりぐり消毒されるのですが、これが泣くほど痛いです…(涙)
話がだいぶそれましたが、このように動物看護師は特に資格を必要としない職業ですので、基本的には誰でもなれます。
しかし、求人があったからといって興味本位で応募することはあまりおすすめしません。
動物病院は見た目やイメージとは裏腹に、かなり危険な職場です。
大事なペットの命を預ける患者さんにとっても、動物看護師はもっとも身近なスタッフであり、気軽に話せる相談相手でもあります。
「新入りにはうちの子を任せたくない」という人も中にはいます。
本気でペット医療の世界に飛び込みたいと考えている人以外は、続けることが難しい職業でしょう。
愛玩動物看護師国家資格について
先ほど「動物看護師は資格がなくても誰でもなれる」とお話しましたが、実は今年に入ってから「動物看護師を国家資格にしよう」という動きが本格的に始動しました。
ペット医療も人間のように高度化してきて、動物看護師の仕事内容もこれまでとは変わりつつあります。
そのような事情もあって、今回の「動物看護師の国家資格化」に踏み切ったのでしょう。
正式名称は【愛玩動物看護師国家資格】といいます。
「愛玩動物看護師法」が成立したのは、2019年6月21日とごく最近の話です。
これで動物看護師の国家資格化が正式に決定したことになります。
愛玩動物看護師国家資格を取るにはどうすればいい?
愛玩動物看護師国家資格は、早ければ2023年に第一回目の試験が実施されます。
これで愛玩動物看護師国家資格を持つ第一期生が誕生するのですね!
今後愛玩動物看護師になるには、この資格を取ることが必要になります。
愛玩動物看護師法案要綱にも
愛玩動物看護師になろうとする者は、愛玩動物看護師国家試験(以下「試験」という。)に合格し、農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けなければならないこと。
という記述があります。
また、この試験も誰でも受けられるというわけではなく、受験資格として以下のいずれかを満たすことが必要です。
(1) 学校教育法に基づく大学において農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めて卒業した者
(2) 農林水産省令・環境省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事が指定した愛玩動物看護師養成所において、三年以上愛玩動物看護師として必要な知識及び技能を修得した者
(3) 外国の第二の2の業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国で愛玩動物看護師に係る農林水産大臣及び環境大臣の免許に相当する免許を受けた者で、農林水産大臣及び環境大臣が(1)及び(2)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの
なんか小難しいですが、要は「国が認めた学校で三年以上動物看護について勉強しなさいよ」ってことですね。
これは人間の看護師と同じですね。
現在の動物関係の専門学校は二年が主流ですので、結構厳しいです。
今後三年制の専門学校や短大が続々と増えることでしょう。
ところでこのままだと、現在の大半がそうであろう「専門学校卒以外の動物看護師」として働いている人はどうなるのでしょうか?
そもそも今の専門学校が都道府県知事指定の養成所かどうかもわかりませんし、三年学んだ人ともなるとかなり少ないと思います。
現状では受験資格を持たない現役動物看護師ばかりだと思うのですが、その辺どうなんでしょうか?
愛玩動物看護師法案要綱を読み進めていくと【受験資格の特例】なるものがありました!
1 次のいずれかに該当する者であって、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から五年を経過する日までに農林水産大臣及び環境大臣が指定した講習会の課程を修了したもの
(1) 施行日前に学校教育法に基づく大学を卒業した者であって、当該大学において農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めたもの
(2) 施行日前に学校教育法に基づく大学に入学した者であって、農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めて施行日以後に卒業したもの
(3) 第二の2の業務(診療の補助を除く。)に必要な知識及び技能を修得させる養成所であって都道府県知事が指定したものにおいて、施行日前に当該知識及び技能の修得を終えた者
(4) 第二の2の業務(診療の補助を除く。)に必要な知識及び技能を修得させる養成所であって都道府県知事が指定したものにおいて、この法律の施行の際現に当該知識及び技能を修得中であり、その修得をこの法律の施行日以後に終えた者
2 愛玩動物看護師国家試験予備試験(以下「予備試験」という。)に合格した者
さらに小難しくなってますが、やっぱり「とにかくちゃんとした大学か専門学校行ってなかったらダメよ」ってことですね☆
私のようにトリマー養成学校卒がどう捉えられるのかは微妙ですね…。
久しぶりに母校のHP覗いてみたら、なにやら動物看護科も新設されてました。
というか、ビルや内装がピッカピカ☆になっていました…いやそもそも移転してたんだけど。
ちょっとしたショックを受けましたが(笑)、これも時代の流れですね!
ところでこのままだと、やっぱり現役動物看護師に対するフォローが完璧とはいえません。
現役の人たちが働けなくなり、また学校に通うとなったら困る人と動物病院が続出します。
そこで最後に出てきた【予備試験】という言葉。
この試験について言及したのが以下の文章です。
1 農林水産大臣及び環境大臣は、試験を受けようとする者が第五の2の(1)及び(2)に掲げる者と同等の知識及び技能を有するかどうかを判定することを目的として、施行日から五年を経過する日までの間、毎年一回以上、予備試験を行うものとすること。 (附則第三条第一項関係)
2 予備試験は、第二の2の業務(診療の補助を除く。)を五年以上業として行った者又は農林水産大臣及び環境大臣がこれと同等以上の経験を有すると認める者であって、農林水産大臣及び環境大臣が指定した講習会の課程を修了したものでなければ、受けることができないものとすること。
つまり「五年以上働くか、それと同等以上の経験があれば講習会受けたら予備試験受けられるよ」ということですね。
予備試験は施行日から五年間は毎年行われるので、現在現役で働いている動物看護師の人も、五年以上働いていたら受験資格を得ることができるのです(講習会に行く必要はありますが)。
ただし予備試験は五年間しか行われませんので、この間に何が何でも合格する必要がありますね。
動物看護師と一口に言っても、動物病院によって業務内容はバラバラです。
診察補助、手術助手、受付、薬局などを分けて行うところもあれば、私のように何でもやらされる(言い方w)動物病院もあります。
資格の難易度や試験内容などまだまだ不明な点も多く、詳細はこれからといったところですが、動物看護師が国家資格になることによって、さらにペット医療の質が向上することは間違いないでしょう。
まとめ
2019年7月現在、動物看護師になるにあたって必要な資格はありません。
しかし、近い将来動物看護師は国家資格となり、この資格がないと動物看護師になることができなくなります。
早ければ2023年には第一回の愛玩動物看護師国家試験が実施されます。
現在動物看護師として働いている方も、これから動物看護師を目指そうとしている方も、この資格を取ることが必須になります。
特に現役の方にとっては働きながら資格の勉強もしなければいけなくなる(しかも期間限定)ので大きな負担ではありますが、これからペット医療はもっと高度になり、その分動物看護師の役割も大きなものになるでしょう。
現状の動物看護師の給与は決して多いとは言えません。
今回の国家資格化を機に、収入も人の看護師と同程度になることを祈ります。